自社の予約システムや商品DBをMCPサーバーとして公開したものの、取引先から「どのURLに、どのプロトコルバージョンで接続すればよいか」という問い合わせが毎回届く。そんな運用負荷を減らすために設計されたのが、MCPサーバーカード(Server Card)です。
一方で、カードに何を書くかを誤ると、公開してはいけない情報まで外に出てしまいます。本記事では、MCP公式のSEP-2127をもとに、カードの役割と、中小企業が公開側として決めておくべき設計判断を整理します。
MCPサーバーカードとは何か
MCPサーバーカードは、接続前に取得できるサーバーの公開メタデータ文書です。2026年1月提案のSEP-2127で、拡張(Extensions Track)として最終承認されました。
MCP(Model Context Protocol)の従来の探索は、接続先が分かって初めて使える実行時のやり取りでした。サーバーカードはこの手前を補います。クライアントやレジストリが、接続を開く前に名前・バージョン・説明、リモートの接続先URL、対応するプロトコルバージョンを読み取れます。
SEP-2127が挙げる効果は3つです。
- IDE拡張などが、ドメインを指定するだけで自動設定できる
- レジストリやクライアントがドメインを巡回して、MCPサーバーを索引化できる
- 各エンドポイントに接続せずに、サーバー情報を表示できる
サーバーカードは任意の拡張です。カードを公開しないサーバーも、従来どおり動作します。
どこに置き、どう見つけてもらうのか
カードの推奨配置は、Streamable HTTPのURL末尾に「/server-card」を付けた場所です。ドメイン単位の発見にはAI Catalogを使います。
SEP-2127によれば、カードは予約されていない任意のURIに置けます。そのうえで、 が推奨の配置先として予約されています。ドメイン全体の探索は、/.well-known/ai-catalog.json に置くAI Catalogがカードへのリンクを持つ形で担います。.well-known は RFC 8615 で定められた、サービス発見の標準的な置き場所です。
配信上の細かい規定(メディアタイプ、CORS、キャッシュ)は、拡張リポジトリの docs/discovery.md が正本です。SEP本文は最終化時点の記録にすぎないため、実装時は必ず現行の拡張仕様を確認してください。
カードに載せる情報と載せない情報は何か
カードに載せるのは名前・バージョン・接続先・対応バージョンまでです。ツールやリソースの一覧は、仕様上あえて含まれません。
カードが持つのは、name / version / description と、任意の title / icons / repository / websiteUrl、リモートの接続エンドポイント、対応プロトコルバージョン、名前空間付きの _meta です。
ツール・リソース・プロンプトの定義は意図的に除外されています。理由はSEPに明記されています。サーバーが公開する内容は、認証ユーザーや設定、デプロイ状態で変わります。静的な文書では正確に表せず、クライアントが古い情報を信じる危険が生じるためです。
したがって、権限や安全性の判断をカードに頼ってはいけません。実際のツール一覧は、接続後に tools/list などで認証済みの身元とともに確認します。
SEPはさらに、カードは公開文書であるため、認証情報、社内ネットワーク構成、独自ロジック、利用者固有のデータを含めてはならないとしています。
中小企業が公開側で決めておくことは何か
公開側で決めるのは、カードの要否、記載項目のレビュー、更新責任者の3点です。まず自社の公開範囲を棚卸しします。
着手手順は次のとおりです。
- 公開するMCPサーバーを洗い出し、取引先限定か一般公開かを分ける。限定公開のサーバーにカードは不要な場合が多い
- 記載項目をレビューする。内部ホスト名、社内ドメインのURL、担当者名が混ざっていないかを確認する
- 更新責任者を決める。バージョンやURLが変わったらカードも更新する
- 発見用エンドポイントはレート制限をかける。SEPもDoS対策として推奨している
また、カードとライブ探索(server/discover)の値が食い違う場合、クライアントは後者を優先するべきだとされています。カードは参考情報という位置づけを前提に運用してください。大規模な組織向けの統制設計はエンタープライズ向けのMCPレジストリ設計も参照してください。
利用側ではカードをどう扱うべきか
取得したカードは「入口の案内」にすぎません。接続前の信頼判断には使わず、導入審査は従来の確認手順で行います。
外部のMCPサーバーを導入する側では、カードで接続先を自動設定できても、それは信頼の証明ではありません。カードはHTTPSで取得し、証明書検証を有効にします。導入可否は導入前の5つの確認観点に沿って、出所・権限範囲・実行場所を確認します。SEPも、カードが侵害された場合の影響は主に発見性にとどまるとしつつ、クライアントが実行時のメタデータで検証することを前提にしています。
参考
- SEP-2127: MCP Server Cards - HTTP Server Discovery
- experimental-ext-server-card(拡張リポジトリ)
- RFC 8615: Well-Known URIs
まとめ
MCPサーバーカードは、接続前の発見を助ける任意の公開メタデータです。載せるのは接続情報まで、ツール一覧や認証情報は載せない。この線引きが設計の核心です。
自社MCPサーバーの公開範囲の棚卸しや、導入審査の手順化は、Kuu株式会社のAI運用管理サービスでご支援しています。お気軽にご相談ください。