介護記録・報告書をAIエージェントに——現場職員の書く仕事をこう減らす

2026年6月7日 · 医療・介護・ヘルスケア

ユースケース医療・介護介護記録業務自動化
想定業種
介護老人福祉施設・グループホーム・通所介護事業所
規模
入居定員30〜100名・職員15〜50名規模
対象業務
介護記録・申し送り・モニタリング報告書・ヒヤリハット報告
ありがちな課題
記録は残業で片付ける文化・職員によって書き方がバラバラ・報告書の提出が遅れがち
想定する課題
  • 記録作成に費やす時間を削減し、利用者との直接ケア時間を増やす
  • 手書き・個別入力による記録の書き方のばらつきを均一化する
  • モニタリング報告書・ヒヤリハット報告の作成負担を軽減する
アプローチ
  • 申し送り・ケア後の音声吹き込みをLLMが介護記録フォーマットに自動変換
  • 過去記録と当日の観察情報を統合してモニタリング報告書のドラフトを生成
  • ヒヤリハット・事故報告書の入力補助と類似事例の自動参照
期待できること
  • 記録作業時間を1日あたり1時間以上削減できる余地(目安)
  • 申し送り・報告書の記載漏れやばらつきを体系的に防げる
  • 職員の業務負担軽減から、離職率改善への波及が期待できる
-60%
記録・報告書作成にかかる時間の削減(目安)
1日1時間+
1人あたりの捻出できるケア時間(目安)
翌日提出
モニタリング報告書の想定完成タイミング(従来は週明け以降)

※ 数値は一般的な公開情報をもとにした目安であり、特定の実績を示すものではありません。

介護記録・申し送り・報告書の作成は施設職員の就業時間の2〜3割を占めるとも言われる「書く仕事」です。本ページは公開情報をもとに「こういう使い方もできる」という活用イメージを編集部が構成したものです。

① 最新情報の調査:介護記録×AI でいま何ができるか

2021年度介護報酬改定で介護記録の電子保存が正式に認められ、2026年3月を期限に介護事業所と自治体間の書類提出も電子化が原則化される方針が示されています。厚生労働省が約300億円規模の介護テクノロジー導入支援予算を組むなど、制度面・資金面の整備が進んでいます。

技術面では、音声認識とLLMを組み合わせることで「ケアの内容を口頭で吹き込む→介護記録フォーマットに変換」が実用域に入りました。AI音声入力を試験導入した施設では記録作成時間が1日1時間以上短縮できたとする公開情報もあります。モニタリング報告書やケアプランのドラフト生成まで対象を広げる動きも出てきています。

② 需要の特定:記録が「残業の定番」になっているのはなぜか

介護施設の記録業務のボトルネックは構造的に決まっています。

  • 記録種別の多さ: 日常介護記録・バイタル記録・申し送り・ヒヤリハット・モニタリング報告書・担当者会議録など、書くべき書類が多岐にわたる
  • タイミングの問題: ケア中はメモが取れず、シフト終了後に記憶を頼りにまとめて入力するパターンが常態化している
  • 書き方の属人化: 「記録上手な職員」に依存し、新人は書き方を覚えるまで残業で補う
  • 報告書の締め切り圧力: モニタリング報告書は月次締切があり、ケア業務と並行した作成が難しい

最終的なケア判断(ケアプランの変更・主治医への報告・家族への説明)は専門職・管理者が担う必要がありますが、記録の「下書き化・構造化・過去参照」はAIが補える領域です。

③ 用途の考案:実装イメージ

  1. 音声吹き込みエージェント: ケア後に職員がタブレット・スマートフォンに向けて口頭で状況を吹き込む(「〇番の方、14時に排泄介助、問題なし。食事は8割摂取」等)
  2. 構造化エージェント: 音声をテキスト化し、施設の記録フォーマット(ADL・ケア種別・時刻・担当者)に自動変換。砕けた口調でも専門的な介護記録文体に整形できます
  3. 申し送りドラフトエージェント: 当日の記録群を集約し、夜勤・早番への申し送り文書のドラフトを生成。担当者が確認・追記して完成させます
  4. 報告書生成エージェント: 週次・月次で蓄積された記録からモニタリング報告書のドラフトを作成。担当者が確認・修正して最終化します
  5. ヒヤリハット支援エージェント: 事象の入力を補助し、過去の類似事例を自動参照して対策案の候補を提示

職員は各エージェントのアウトプットを確認・修正するだけでよく、0から書き起こす負担がなくなります。

④ 設計・運用のポイント

  • 個人情報の取り扱い: 利用者の氏名・生年月日・病歴は外部送信前に匿名化またはID管理する。施設内完結型の処理環境と組み合わせると安心です
  • 最終確認は必ず人間が行う: AIの生成したドラフトは「参考・下書き」扱いとし、担当職員が内容を確認・修正してから記録を確定する運用ルールを明文化する
  • 書式への適合: 施設ごとの記録フォーマット(自治体指定書式・法人独自様式)に合わせたプロンプト設計が必要。導入前に書式の棚卸しを行い、フォーマット定義を固めます
  • 段階的な拡張: まず「日常記録の音声入力→構造化」から始め、定着後に「申し送り→モニタリング報告書」へ対象を広げる進め方が現場の負担感を抑えやすいです
  • 導入支援制度の活用: 厚生労働省の介護テクノロジー導入支援補助金など、活用できる助成制度を事前に確認することで、初期コストを抑えた試験導入が可能です

ケアに入る時間が足りないのではなく、記録と報告書に追われてケアに戻れない。記録を話しかけるだけで整理してくれるなら、その時間を利用者に使えるはず——そんなニーズに応えられる設計です。

想定ペルソナ:介護老人福祉施設の施設長
Claude 系 LLM による記録構造化とドラフト生成音声認識モデルによるテキスト変換(方言・介護専門語対応)エージェントオーケストレーションによる多段処理(観察→記録→申し送り→報告書)9軸評価によるアウトプット品質モニタリング

記録の自動化が定着した次は、蓄積されたケアデータをもとに状態変化の早期検知や、ケアプランの定期見直し提案へ発展させる余地があります。施設内で記録が横断的に参照・分析できる基盤ができれば、多職種連携の質と速度が向上し、介護の標準化と個別最適化の両立が近づきます。

  • https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000906790.pdf
  • https://www.mhlw.go.jp/kaigoseisansei/ns/needs/page/n0001.html
  • https://renue.co.jp/posts/care-ai-monitoring-record-careplan-guide-2026
  • https://www.unite-x.co.jp/blog/nursing-care-ai-flow-2026

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